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福島からの報告


損害賠償打ち切り狙いコメ検査縮小

 2011年3月の東日本大震災の原発事故から9年が経ちました。福島第1原発は、原子炉を水で冷やし再び爆発しないように応急処置で防いでおり、事故は収束しておらず、当時となんら変わっていません。しかも、1日200トンの汚染水をポンプで汲み出しているため、貯蔵タンクは22年で一杯になり、海洋投棄が漁業団体などの強い反対を押し切って唯一の解決策かのように進めようとしています。また、避難区域への帰還の強制、子供たちの甲状腺がん発症や内部被ばくの現実は深刻です。国や東電、福島県立医大が放射線被害を一切認めないから起こっている矛盾です。
 福島県は、2012年より玄米の放射性物質の検査(全量全袋検査)を、主食米・飼料用米・くず米など全ての米を対象に、ベルトコンベヤー式の測定器を使い、そこを通過する数秒間で測定を行ってきました。しかし、避難指示が継続している12市町村を除いて、今年産米より旧市町村(1950年頃の行政区分)ごと3ヶ所の検査(緊急時環境放射線モニタリング)に変えようとしています。
 また、水田の土壌より放射性物質を稲が吸収しないように行ってきた吸収抑制対策(塩化カリの散布)も今年から行わない予定でした。しかし、昨年の台風19号で河川から水田に土砂が流れ込んだり、稲刈り後の切わらが流出したり、甚大な被害がでました。そのため、土壌中のカリ濃度の低下と流入した土砂に付着した放射性物質の吸着の懸念から、今年だけは塩化カリの散布を実施することとなりました。土壌中に付着した放射性物質(セシウム)は少し減少したものの、無くなったわけではありません。毎日食べる主食から放射性物質が体内に摂取され、内部被ばくの懸念が大いにあります。
 福島県は、原子力災害対策特別措置法に基づき「原子力緊急事態宣言」が出されたままで、いまだに解除されていません。「原子力災害の拡大防止を図るための応急の対策はまだ必要」であり「避難困難区域がのこっている」からです。安倍政権は、放射線量を偽ってまで強行するJR常磐線の全線開通を呼び水に帰還困難区域の避難解除を狙っています。国は、裁判でも放射性物質の農地への拡散の責任を居直っています。コメの検査縮小は「福島のコメは安全」の流れを作り、東電の損害賠償を打ち切りを狙った攻撃です。どこまでも国と東電、県立医大の責任を追及しましょう。
               (福島 渡辺)


# by nominkaigi | 2020-10-07 17:52 | 記事

沖縄からの報告


害虫大発生と日照不足で野菜は不作


 沖縄はこれからいよいよ台風シーズンをむかえることになります。夏場の台風は例年と比べて少なく、害虫がかなり多く発生しています。街路樹として使われているアカギが軒並みやられています。シークワーサー(九年母)も樹皮が剥がれ、そのまま立ち枯れていく被害が広がっています。原因(害虫ではない)がわからないそうです。
 資本の利潤追求のために、人間と自然の新陳代謝が破壊されていることが根本的な原因です。地球の温暖化と異常な気候変動もそうです。このような資本主義のもとで、農業がこの先本当に成り立つのか、危機感とともに怒りすら感じます。
年々の暑さはますますひどくなっています。今年は暑さと日照不足で、私の畑でも多くの作物が不作となっています。エンサイ、茄子、ゴーヤ、ナーベラ(へちま)、ネリ(オクラ)、モーイ(うり)などを作っていますが、とくにゴーヤ、冬瓜、うりずん豆などは、4~5月の植え付けのときの日照不足でほとんど壊滅的です。南瓜(かぼちゃ)だけはどういうわけか豊作になっています。
 沖縄には〈なんくるみ~〉という言葉があります。どこからか勝手に種が運ばれたり飛んできたりして、勝手に根付くことを言います。私の畑でも、植えた覚えのないところに南瓜がなっています。そういうものほど逞しく育っています。
これから今年の秋野菜(冬野菜)の種まきがはじまります。サニーレタス、島らっきょう、ほうれん草、じゃがいも、ニンニクなどです。沖縄の9~11月は大型台風が到来する時期と重なってきます。畑の傍らにバナナの樹を植えていますが、台風がくればひとたまりもありません。なんとか持ちこたえて欲しいと願っています。
以前に三里塚を訪問したときに萩原富夫さんから里芋をいただき、私の畑で植え付けをして毎年のように収穫しています。今年の収穫は若干少な目ですが、「三里塚の里芋」ということで周りに配っています。けっこう喜ばれています。
 コロナ情勢のもとで成田空港そのものが破綻しているなかで第三滑走路建設など不可能です。三里塚反対同盟の市東さんや萩原さんの闘いに思いを馳せながら、沖縄から農地強奪絶対反対、種苗法改悪にたいする取り組みをやっていきたいと思っています。ともに闘いましょう。
                 (沖縄支部 宮城)


# by nominkaigi | 2020-10-07 17:46

 

去る7月10日、東京電力を相手に農地の原状回復を求めた裁判の差し戻し控訴審の第2回公判が仙台高裁で行われ、福島支部から2名で参加した。今回は、原告2名の意見陳述が行われた。


強者の理不尽に甘んじない

 一人目は、会津地方でコメ作りをしている武田さん。「この裁判の原因は東電だ。もう丸9年たった。塩化カリウムを撒いてもセシウムが無くなる訳ではない。土づくりにこだわり、安心して食えるコメ作りをしてきた者としてはやるせない思いだ。14年10月14日に福島地裁郡山支部に訴えを起こして、この窮状を訴えてきた。郡山地裁では敗訴したが、仙台高裁で差し戻しとなり、自分たちの訴えは間違ってはいなかったと確信した。ところが差し戻し審で福島地裁はそれを認めてくれなかった。浜通り8市町は農地の土壌入れ替えをするのに、同じく他人の土地に勝手に放射性物質をばらまいたのに、それは農民のものだという驚きの判決だった。弱い者が強い者の理不尽に甘んじなければならないのはおかしい。また、トリチウム水の放出について論議されているが、そもそも海に放出するのは不法投棄ではないか。それが福島では特措法で許されるというのも変な話ではないか。裁判所にあってはこれらに鑑み正しい判断を求めたい。」と堂々と訴えました。

迷惑かけ続ける身勝手な東電


 二人目は、大玉村でコメ作りをしている鈴木さんが立った。「原発事故から9年が経ち、私の生活は、原子力災害法を原因とする『緊急事態宣言』と、更にコロナウイルスを原因とした『緊急事態宣言』の、二重の緊急事態宣言下に置かれています。原発事故の被災者である身でありながら、コロナ対策もしなければなりません。経験のない事態が重なり、誰からも適切な助言等はいただけず、大変困難な状況に置かれています。『トリチウム水』の海洋放出問題がマスコミを賑わせています。しかし、この重大な問題について、原発から30Km圏外に居住している私達は、被告東京電力から、何も知らされていません。なぜ福島県沿岸のみからの海洋放出が議論されるのでしょうか。場合によっては『受益者』である東京の、東京湾へタンカー輸送しての放出も当然検討されて然るべきではないでしょうか。被告の言っていた『風評被害対策』はどこに行ったのでしょうか? 後始末のできない一私企業が、未だに国民に迷惑をかけ続けているのはどういうことなのでしょうか?身勝手な被告東京電力の言動は、『もう止めてほしい』と思います。」


 原告ふたりの切なる訴えにもかかわらず、仙台高裁はたった2回で打ち切り、実質審理なしの暴挙です。判決は9月15日(13時15分、401法廷)です。私も、原告農家の思いを我がものとし、不当な判決を許さない闘いを作っていこうと思います。


(福島支部 吾妻)



# by nominkaigi | 2020-09-07 15:53 | 反原発


新潟・百姓塾 堀井修


 種苗法改正を今国会で成立させる予定でしたが、検察官の定年延長法でつまづき、次回の臨時国会に持ち越しになりました。

海外流出防止は目くらまし
種苗穂の改正 ―タネを自分で取ってはいけない?_b0402531_11000351.jpg


 改正案は「和牛の精液と、シャインマスカット(ブドウ)の海外への不正持ち出しを防ぐ」ことが提案理由になっています。たしかに和牛もシャインも、日本国内で時間や労働力と知識を使って作り上げられたものです。これを守ることは国益を守ることです。誰も反対しないはずです。(写真:岡山県のシャインマスカット)
 しかし、この裏で農家が種苗の自家採取することを「禁止する」という、とんでもない項目が盛り込まれています。栽培するためには登録者の許諾が必要になります。自家採取とは農家が翌年に作る苗や種を取ることです。
 自給野菜などの種や苗の大半は購入します。私もキュウリ5本、トマト3本、ナス6本、ピーマン6本などを、4365円でスーパーで買ってきました。
 中でもトマトは挿し木がいくらでも効くので、3本のトマトは秋には10本にもなります。これが違反となるのです。
 またイチジクの新しい品種を1本4500円で買ってきたとします。その年に枝が伸びます。その枝で50本の挿し木の穂木が取れました。それも立派な違反となるのです。
 ましてや一株で1000粒にもなる稲はもちろんですね。プロのイチゴ農家は数万本の苗を自分で作りますね。

「登録品種が対象ですから」
 農水省は「昔から地域で作られている作物は対象ではありません」「登録切れの品種も対象ではありません」と言います。(登録有効期間は野菜が15年、果樹は20年です)
 しかし、現在登録されている品種は8315もあり、毎年800種が登録がされます。今回の改正案では登録の簡便化が盛り込んであるのです。
 稲では最近の新しい品種は登録済みです。そのほとんどは県の試験場で育成された品種で、多くはお金を許諾することはないと思います。税金で作っているのですから。
 しかし、なぜ種子法法が廃止されたのでしょう。これからは民間の育種が大半を占めようとしています。そうなれば許諾にお金が必要になるのは火を見るよりも明らかです。

民間にも育種家がいます
 昔は稲も野菜も果樹も、地域で品種の中でより良いものを選抜して種や苗を生産してきました。その中には個人が交配によって作ったものや、観察によって偶然見つけたものもあります。そのような品種は尊重しなければなりません。
 しかし、たいていは大企業に吸収されて、モンサント等に代表される海外の大企業に飲み込まれてしまします。「種を制する者は世界を制する」と言われていますね。

種は人類の財産
 1万年前頃、人類は農業・牧畜を始めたと言われています。コメは河口の湿地帯に生える雑草の中から、麦は乾燥地帯の雑草の中から、時をかけて選抜育成した人類共通の財産です。それらを個人や企業の利益のための手段としてはいけないはずです。工業製品とは価値が違います。
 つまり種苗は極端な言い方をすれば、人類が農業・牧畜を始めた1万年前から蓄積した知識、文化と言えるのです。
 それを知的所有という問題にすり替えて、個人の利益に誘導することは犯罪とも言えます。まさに新自由主義そのものです。種苗法改悪に反対していきましょう。


# by nominkaigi | 2020-08-01 11:16 | 種苗法改悪


コロナで社会の底辺から飢えが広がっている

世話人 小関恭弘(山形県)

 この4~5月は年度初めの会議や飲み会は軒並み中止となり、春作業は順調に進んでいました。5月始め、大野和興さんや上越の天明伸浩さんの呼びかけで各地の農民グループとともに、自分たちが作ったものを困窮する人たちに送ろうというプロジェクト「コメと野菜でつながろう」を立ち上げました。

 「こうしている間にもコメが食えない人が出ている。何のためにコメを作っているのか。ささやかでもコメを届けたい。百姓仲間はみんなそう思っている」(呼びかけ文より)

 「やろうか」ということになり、「コメと野菜でつながる百姓と市民の会」を急きょ作られました。コメ野菜は百姓が提供し、送料は市民グループが出すことに。会の中軸を担った置賜百姓交流会と上越有機農業研究会は2日間で2トンの米を集めました。私も80キロの米を送りました。全国各地の農民から「自分も仲間に」という問い合わせが来ています。

 送り先は、「新型コロナ災害緊急アクション」(野宿労働者や日雇い労働者、職を失った人、シングルマザー、高齢者を支援する活動をしている)と相談し、3つに絞りました。シングルマザーや失業者など困っている人にコメ5キロの緊急支援を始めた「一般社団法人あじいる」。野宿・日雇労働者に対する炊き出しから撤退する団体が多い中で、このままではコロナに感染する前に飢え死にしてしまうと弁当を作り配布している「山谷日雇労組」。野宿者一人一人と細やかに触れ合い、生活と心の支援をしている「きょうと夜まわりの会」です。

 5月中旬、それぞれのグループに毎週コメ40キロを送ることから始めました。 始めてまもなく、緊急アクションの事務局長瀬戸大作さんから、移住者と連帯する全国ネットワークから仕事と居場所を追われた外国人労働者と家族が深刻な状況にあり、コメを送れないかという要請が入り、第一弾として急きょ140キロを送りました。6月には第2弾として300キロから400キロを上越、置賜で送りました。

「コメと野菜でつながろう」の取り組み_b0402531_15411973.jpg

 日雇・野宿労働者の仕事づくりで始まった企業組合あうんの協力団体で、食と健康にかかわる活動をしている「あじいる」には、いくつものメールが寄せられています。あるシングルマザーは子どもに食べさせるため自分は1日1食で過ごしているそうです。山谷日雇労組の山崎委員長からは「山谷の労働者にとって、今回のコロナは、働くこと、食べること、一日一日を行きぬくことが非常に困難になっています」というお便りをいただきました。山谷ではいくつものグループが炊き出しをしていたが、人が集まることを避け、どこも休止しているそうです。その中で日雇労組は炊き出しに代わり弁当を作り、配っています。「きょうと夜まわりの会」はおにぎりを作り、配りながらくらしと心のケアをしている。職を追われた外国人労働者は家族や少人数の仲間に分かれてひっそりと過ごしているが、手持ちのお金がつき、食べられない日も多いという。

 私たちの命と暮らしに関心を寄せない安倍政権の姿勢にあきれました。一方で、2ヶ月も3ヶ月も仕事を休み、自宅に引きこもっていて、厳しいながらも生きられる余力と貯えがある人が、これほどいるとは驚きでした。

 この社会では災害や被害はもっとも弱い人たちにしわ寄せされます。コロナ禍でもそれはますます明らかになりました。人が人として生きられる社会へ、生産者である労働者や農民がつながれば十分生きていけます。そのことを示したのが、「コメと野菜でつながろう」の取り組みでした。
(写真は、5月中旬の新潟市内の水田)


# by nominkaigi | 2020-07-25 16:00 | 安倍農政批判