2020年 08月 01日
種苗穂の改正 ―タネを自分で取ってはいけない?
新潟・百姓塾 堀井修
種苗法改正を今国会で成立させる予定でしたが、検察官の定年延長法でつまづき、次回の臨時国会に持ち越しになりました。
海外流出防止は目くらまし
しかし、この裏で農家が種苗の自家採取することを「禁止する」という、とんでもない項目が盛り込まれています。栽培するためには登録者の許諾が必要になります。自家採取とは農家が翌年に作る苗や種を取ることです。
自給野菜などの種や苗の大半は購入します。私もキュウリ5本、トマト3本、ナス6本、ピーマン6本などを、4365円でスーパーで買ってきました。
中でもトマトは挿し木がいくらでも効くので、3本のトマトは秋には10本にもなります。これが違反となるのです。
またイチジクの新しい品種を1本4500円で買ってきたとします。その年に枝が伸びます。その枝で50本の挿し木の穂木が取れました。それも立派な違反となるのです。
ましてや一株で1000粒にもなる稲はもちろんですね。プロのイチゴ農家は数万本の苗を自分で作りますね。
「登録品種が対象ですから」
農水省は「昔から地域で作られている作物は対象ではありません」「登録切れの品種も対象ではありません」と言います。(登録有効期間は野菜が15年、果樹は20年です)
しかし、現在登録されている品種は8315もあり、毎年800種が登録がされます。今回の改正案では登録の簡便化が盛り込んであるのです。
稲では最近の新しい品種は登録済みです。そのほとんどは県の試験場で育成された品種で、多くはお金を許諾することはないと思います。税金で作っているのですから。
しかし、なぜ種子法法が廃止されたのでしょう。これからは民間の育種が大半を占めようとしています。そうなれば許諾にお金が必要になるのは火を見るよりも明らかです。
民間にも育種家がいます
昔は稲も野菜も果樹も、地域で品種の中でより良いものを選抜して種や苗を生産してきました。その中には個人が交配によって作ったものや、観察によって偶然見つけたものもあります。そのような品種は尊重しなければなりません。
しかし、たいていは大企業に吸収されて、モンサント等に代表される海外の大企業に飲み込まれてしまします。「種を制する者は世界を制する」と言われていますね。
種は人類の財産
1万年前頃、人類は農業・牧畜を始めたと言われています。コメは河口の湿地帯に生える雑草の中から、麦は乾燥地帯の雑草の中から、時をかけて選抜育成した人類共通の財産です。それらを個人や企業の利益のための手段としてはいけないはずです。工業製品とは価値が違います。
つまり種苗は極端な言い方をすれば、人類が農業・牧畜を始めた1万年前から蓄積した知識、文化と言えるのです。
それを知的所有という問題にすり替えて、個人の利益に誘導することは犯罪とも言えます。まさに新自由主義そのものです。種苗法改悪に反対していきましょう。
by nominkaigi
| 2020-08-01 11:16
| 種苗法改悪