2020年 01月 10日
ゆい44号(2020年1月10日発行)種子法の役割は重要
講演会は午後から甲州市中央公民館で20人の参加を得て開催しました。
堀井さんからはじめに「種子法は戦中から戦後にかけて日本が食料難を経験する中で時の政府が、安定した食料を供給するには『優良な種子が重要』ということで、米などの優良な種を安定的に供給することを都道府県に義務付け、その予算を国が責任を持つことを定め、1952年に制定された」と種子法制定の経過と、果たしてきた役割が話されました。それが2016年、安倍首相直属の規制改革推進会議で「種子の生産も民間にまかせるべき」という提起がなされ、「民間活力で農業の発展を」と企業優先の論理で、現場からの意見をくみ上げることもなく、18年4月に廃止されてしまいました。堀井さんは、食料生産が「民間活力」とか「利益第一」の論理に支配されたらどうなるかを、長年の経験も含め具体的に話されました。
それから2年、全国の自治体の中で種子法廃止を受けて、廃止前と同様の体制を継続する種子法廃止対策の意義を持つ新条例が13道県で制定されています。そうした動きを紹介し、堀井さんは「種子法は復活されるべき」と話されました。
活発な質問、意見
参加者は、私たちと同年代の農業者が中心です。日本の農業をめぐる危機的現実を前に、3時間にわたる講演と質疑では多くの質問や意見が出されました。「農家の後継者不足、農業の衰退にどうしたらいいのか」「アメリカとの貿易協定で農産物、畜産物が多量に入ることが予測されるが、遺伝子組み換え作物や肉の安全についてどう考えるのか」「国連が言っている家族農業の奨励とはどういうことか」など、話題が尽きませんでした。
山梨支部として日本の農業・農民問題を正面から課題として講演会・学習会を呼びかけたことは、結成以降初めてです。今回の講演会で一つの方向が出たということではありませんが、地域の農民が農業の現実に対して様々な危機意識もっており、その人たちが講演会に結集し、活発に意見交換を行うことができたことは私たちの今後の闘いへの大きな一歩を開いたと思います。
地域とつながり安倍農政と対決しよう
農民はこの社会に不可欠な食料の生産を担っており、労働者と共に社会の主人公です。政府は農民がまともに生活ができ、後継者ができるような農政を行う責任があります。
2020年は安倍農政・9条改憲攻撃と対決し、2月の第8回全国農民会議総会に向けて闘いましょう。
自家培殖を禁止する種苗法改悪許すな
通常国会に種苗法の改正案が提出されようとしている。種子法廃止とセットで「地方自治体の公的種苗事業を民営化」する動きであり、農家の自家培殖を原則禁止にする農業の根幹を変える攻撃だ。
農水省の有識者検討会で、昨年3月から議論してきた。日本が開発した「シャインマスカット」や「とちおとめ」などの優良品種が海外に流出していることが問題視され、その対策だという。
改悪のポイントは2点。
ひとつは、登録品種の域外(国外および県外)への持ち出し禁止であり、悪質な違反の場合は10年以下の懲役または1000万円以下の罰金を科す。
二つ目は、自家培殖を許諾制にすること。農家の自家培殖が原則禁止となる。許諾の手続きの手間やそのための新たな料金が発生することになる。
「在来種などの一般品種は、従来通り増殖や利用に制限がない」と説明するが、企業が開発した品種は必ず種子や苗を買ってくださいとなるだろう。巨大アグリ企業による「種子の独占」が進められてきた。この間種子を買わなければ農業ができなくなり、開発途上国の農業・地域が壊滅的に破壊されてきた。
そもそも日本の優良品種の海外流出が問題なら、海外で特許を取得すれば裁判で流出を阻止できる。それを怠ってきたのが日本政府である。海外流出の問題ではなく、種子や苗の企業独占の問題である。
「生命に特許はいらない!キャンペーン」など、すでに多くの運動体が種苗法改悪反対の行動を起こしている。私たちもともに行動していこう。
三里塚 12・24反対同盟「空港拡張説明会」抗議に立つ
12月24日、三里塚芝山連合空港反対同盟と支援は、成田空港拡張・第3滑走路建設のための公聴会を弾劾するデモを行なった。現在の空港敷地を2倍化する第3滑走路の建設という「施設変更」を空港会社が申請し、それを許可するかどうかを国交省が「住民や関係者から意見を聞く場」が公聴会の建前だ。だが実際ははじめから結論ありきのアリバイづくりでしかない。
公聴会で反対同盟・伊藤信晴さんは反対意を述べた。移転が強制される地域・芝山町に住む町民の訴えに大きな拍手が起こった。他に5人が反対意見を表明。
市東さんの農地強奪と並ぶ、大攻撃として成田空港の拡張がある。全国の力でこの攻撃を粉砕しよう。
市東孝雄さんの意見陳述
昨年(18年)12月20日、一審の千葉地裁・高瀬裁判長は、農地取り上げの強制執行をやめさせるように求めた私の訴えを不当にも棄却しました。
一審判決は、私の生計と生きる希望を断ち切り、「農業をやめろ」というものです。私は一審判決を絶対に受け入れることはできません。(中略)
現在私が耕作している農地の総面積は約1町7反です。空港会社が小作地の解約許可処分により本件強制執行で取り上げようとしている農地面積は、天神峰農地が4反6畝、南台農地が2反7畝の合計7反3畝です。これに不法耕作地だと嘘をついて民事訴訟で取り上げようとしている南台農地5反7畝を合わせると1町3反になり、これは私の農地の73% になります。
もともと空港会社は1988年に父東市に知らせず小作地を買収し、その後15年間も地代をだまし取ってきました。こんな違法な手段を取ってきた空港会社が強制執行で私たちから大事な小作地を取り上げることなど絶対に認められません。法律上も憲法上も許されないと信じています。
空港会社は私の所に2回来ましたが、「話し合い」など一切したことはありません。私は、小作地を空港会社が買収したと新聞で見たとき、耕作者本人が知らいないうちに買収できないと思っていましたので、とうてい信じられませんでした。
こうした状況で、どうして空港会社が「話し合いによる解決をするために合理的な努力を尽くした」と言えるのでしょうか。
私が心底から求めることは、自分農業を続けることです。そして「三里塚産直の会」に参加してくれている産直消費者の会員とともに完全無農薬有機農業を営み、三里塚でとれた新鮮で本物の野菜を提供し続けることです。これは私の農民としての生き甲斐です。
一審判決は、私に農業をやめろというものです。人間の職業を強制的に奪うことが許されるのでしょうか。裁判所は、有機野菜を作り消費者に届けたいという農民としての生き甲斐、人間の尊厳を潰すことをして、人を何と思っているのか、と私は叫びたい。
私は、農民の生きる意欲を潰してしまう強制執行を絶対に認められません。
(昨年9月24日の東京高裁で行なわれた請求異議裁判での意見陳述)
原発を今すぐ廃炉に!3・11福島行動へ
いろいろなところで警鐘を鳴らしたにもかかわらず、全く対応しないで、結局、原発をメルトダウンさせてしまった東電。原発を今すぐ廃炉にしなかったらとてつもない禍根を将来に残す状況が生まれている。このことに危機意識を持たなくてはならない。
廃炉も進んでいるというが決死的な作業ばっかりをさせている。「おかしいぞ」「もっと安全対策をしなくてはなんない」と思う。
なんであの排気塔を解体しなくちゃならないかというとオリンピック対策なんですよ、何としても隠さなくてはという。でも、オリンピックで隠そうが、何で隠そうが、原発の現状を隠すことはできません。やはりちゃんと放射能の災害に向き合って、地域住民を守っていくという姿勢が欠けているんだよね。安倍政権は最低だね。
今回の台風19号の大水害、福島県内でも想像以上にひどい被害だった。私の畑、阿武隈川のすぐそばの牧草地がかなり水没して、今後の影響が心配である。農作物の被害もこれからどんどん出てくる。「ハウスつぶれたからもうやめようかな」とか。酪農で30頭くらい飼ってる人が半分くらい水没して、「牛が溺死して俺もうやめようかな」という状況が生まれている。これから大変なことになるという状況だ。天皇がお見舞いに来たが、天皇が来たって若い人は働きに行ってるし全然関係ない。
安倍政権は、年末、中東への自衛隊派兵を閣議決定した。今までと、まるっきり違う。今回は、誰の要請に基づいているわけでもない。中東から石油を持ってくるんだという、ものすごい意志の詰まった派兵だ。そのことをちゃんと見ておく必要がある。最初は調査だなんて言ってるけど、もう完全に改憲の先取りだよ。むしろ改憲が後からついてくるような、そういう状況を作り出していくものだ。「改憲する」「戦争する国づくりをする」、そうしないと自分たちの存在自体が危ないと安倍政権は本気になってきている。今回のカジノの問題もそう、金まみれの政治ですよ。
そういう中でこの原発っていうのは何なのか、その被害を受けた人々たちに対する完全な賠償なんてやらないわけでしょう。ましてやこれからトリチウムが問題となっている汚染水を海に流すっていうことを、権力が許したって地域住民が許さないし漁民も許さない。安全神話崩れたわけだからね。そういうこと考えると、やはり直ちに原発止めて新しい道を選択しないといけない。
今年の3・11反原発行動は新しい力をもって取り組んでいきたい。韓国の闘い、香港の闘いに学んで、やはり大きな声を上げていこうと思う。そして正しいことを正しいと自己主張していこうと思う。そういう雰囲気を作っていかないと、安倍政権に負けちゃうと思う。
若い人の声っていうのは、労働組合を中心とする労働者本体の闘いと必ずや結びついて大きな闘いとして世界的な結合を生み出していく。そういう第1歩として、3・11行動にしていきたいと思う。ぜひ郡山市に来てください。
(共同代表 鈴木光一郎)
安倍農政で生きていけない! 所得保障を要求する
安倍農政が始まって7年。全国農民が生きていけない現実が加速している。大規模農家も、小規模農家も同じだ。農民の怒りは昨年の参議院選挙でも示されたが、安倍農政を変えるまでの力になっていない。
全国の農民が声を上げる必要がある。今後の運動を考えるために、農民の置かれている現状、日本の農政を分析してみた。運動の発展に活用してもらえたら幸いである。
(事務局)
(1)農業所得と農作業時給の低さ
農家の総所得は〈農業所得〉〈農外所得〉〈年金等〉から構成される。
2004年に統計方法が変わり、世帯員全員の所得から農業に関与する者のみになったため、一農家当たりの総所得は800万円台から500万円近くに落ち込み、17年は521万円だ。一方、農業所得は、2010年までは120万円台だったが、ここ数年は少し増え17年は185万円である。なぜ増えたのか、原因ははっきりしない。細々と続けていた零細の販売農家が高齢化で廃業したので、相対的に農業所得が増えたと考えるのが妥当だろう。
〇農業所得は185万円
いずれにせよ農業所得は100万円台でしかない。世間では年収200万円以下の労働者を〝ワーキングプア〟というが、全国の農民は低所得者層でしかない。兼業による〈農外所得〉と〈年金等〉に支えられて、かろうじて農業を続けている。〈年金等〉の比率が40% 近くになっているのも、農業従事者の平均年齢が67歳なのだから当然である。自分の年金と親の年金を当て込んで、生活が成り立っているのだ。
〇作業時給は最低賃金並
「農作業は割に合わない」は農民が皆感じていることだ。実際に農作業の時給を調べてみた。
農林水産省が発表している「類型別経営統計」の中に「労働時間」「農作業時給」の項目があり、公式の統計でさえ低賃金を示している。
米881円、畑作979円、野菜(露地)877円、果樹848円、花き623円、軒並み最低賃金水準である。畜産だけが大きく上回っている。
ちなみに各県別に定められている最低賃金は、福島県798円、新潟県830円、千葉県923円、岡山県833円である。〈農業所得〉がワーキングプアになるのは当然である。
1990年代から農産物輸入自由化と食管制度廃止で畜産物と果樹、コメの価格がドンドン下がってきた。農産物価格が安いから農業所得が上がらないのは当然だ。
昨年末、2020年度予算案が発表された。農林水産省の予算(農業予算)は2兆2170億円である。
1990年の2兆8737億円と比較すると77%に過ぎない。予算総額66兆2736億円→102兆6580円(155%)であり、防衛省4兆1593億円→5兆3133億円(128%)、厚生労働省12兆600億円→33兆366億円(274%)と、いずれも増加している。農業予算が極端に減額されている。
同時に、国家予算に占める農業予算の割合は2・5%で、米国と同程度、ヨーロッパ各国の半分程度でしかない。国民1人当たりの農業予算が日本183ドル(約2万円)で、アメリカとフランスの6割程度でしかない。一農家あたりの農業予算は米国、ヨーロッパ各国の3分の1~4分の1の低い水準なのだ。
〇農業土木予算が急増
民主党政権時に「コンクリートから人へ」をスローガンに、農政では農業土木工事を縮小し、農家戸別所得補償制度を導入した。第2次安倍政権が発足し、公共事業関連予算が増加・非公共事業関連が急減している。具体的に2015年予算で見ると、公共事業関連30%、非公共事業関連70%であるが、非公共関連の4割がハード整備であるために、土木事業関係の割合は全体の58%にもなる。
安倍政権は農業予算を、農家の収入増加ではなく、建設・土木業界のために使っているのだ。
(3)「農業過保護」論への反論
1農家当たりの農業予算が米国・ヨーロッパ諸国の3分の1~4分の1程度であることを見ても、「日本の農業は保護されている」は間違いだ。しかも、農業予算で公共事業関連が重視され、農家の所得に直結するような「農業所得に占める補助金の割合」は極端に低い。
〇安全・安心のために
ヨーロッパ諸国は、農業所得の9割以上を補助金で賄っている。「国内農業を守る、農産物の国内生産を維持する」ーそうした考え方が根付いている。戦争による食糧不足への懸念、安全・安心な食への意識が強いからだ。
そもそも日本やヨーロッパの農産物が、発展途上国と競争して勝てるはずがない。輸出用の戦略的農業として生産するのだから。米国でさえ、輸入穀物の小麦、トウモロコシ農家の所得の半分が補助金である。
○2種類の農業
評論家・三橋貴明氏は農業を「国民の胃袋を満たす農業」と「外国に売って儲ける農業」に大別する考え方を示した。言い換えると「(人間が生きるために)必要な食糧をつくる農業」と「金儲けのための農業」である。安倍政権が進めているのは明らかに後者だ。
だが「金儲けのための農業」に変った時、人類にどんな災厄が降りかかったを思い出す必要がある。自然破壊、土壌破壊、環境破壊が引き起こされただけでなく、有り余る食料にもかかわらず発生する飢餓と貧困。さらには食の安全性の破壊(農薬、添加物、遺伝子組み換え)。企業による農業支配などなど。「金儲けのための農業」は、日本の農民だけでなく、全世界の農民を、ひいては全世界の労働者民衆を不幸にしてきただけである。
私たち農民は「人間が生きるために必要な食糧を生産する存在」である。安全で栄養価の高い農産物を、自然破壊や環境破壊をしないで、持続可能な形で生産していきたいと考えている。それが農民としての誇りである。
(4)農民としての「生きる権利」
日本の農民がまさにギリギリの状態にあることは、みな等しく実感している。しかし、農民の切実な声が社会的に大きくなることがない。民主党議員が「98・5%の利益になるTPPを推進すべき」と言い放ったように、農民人口が2%未満の現実がある。
だから敢えて全国民に問いかけたい。「安倍農政で日本農業が壊滅しても構わないのですか? 」「一握りの大規模農家で日本農業は支えられますか?」「地域農業を守り、農業を持続可能にするにはどうしたらいいのか?」と。
農民が生活していけるだけの十分な所得があれば、日本農業は確実に再生する。いまなら絶対に再生は可能だ。労働現場が「ブラック化」しているために、若い世代が自然と直接触れ合う農業に興味を持っている。農家の外にも農業後継者は広がっているのだ。
「農家で飯は食えない」ーこの現実をひっくり返すことができればいいのだ。日本農業の将来、労働者民衆の胃袋を満たし、健康を保つために、私たち農民は「農家の所得保障」を堂々と要求しよう。
ドイツ農民もトラクターデモ
ベルリンで11月26日、ドイツ全土から集まった約5千台のトラクターが道路を占拠し、交通が大混乱に陥った。約1万人の農家らが怒りの声を上げた。「人々の腹を満たしているのはわれわれだ」などと抗議文を前に掲げた巨大なトラクターが何台も連なり、主要道路や観光名所ブランデンブルク門などを行進した。今回のデモの背景にあるのは、環境意識が高まる中、「農業は土壌汚染の原因」「家畜を虐待している」という不当な批判に対する反発である。オランダに続く、農民の大規模抗議である。
by nominkaigi
| 2020-01-10 19:35